CONTAX645と過ごした25年、そして別れ(2024年初夏)
1999年に発売された京セラのCONTAX645、発売直後に購入し、25年間を一緒に過ごしました。海外旅行にも何度も付き合ってもらい、思い出に残る写真も多数撮ることが出来ました。そのCONTAX645とも、とうとう別れの日がやってきました。
理由はなんだろう? 220タイプのフィルム販売停止、フィルム・現像代の高騰でフィルム・デジタルハイブリットカメラとしての機能も諦めざるを得なかったこと? 加齢とともにシステム一式の大きさと重量が大きな負担になってきたこと? 本気モードで撮るためには(機材の性能をフルに出すためには)きちんとした三脚を持ち出すことも大きな負担であることは事実。そして老眼により素早いMFピント合わせが難しくなってきたこと? PhaseOne P30+(3000万画素)のイメージセンサーにさすがに飽きてきた?
でも、残された膨大なネガ・ポジフィルムとデジタルデータは、このブログの更新に役立てていきたいと思っています。
以下に一言、思い出やコメントをつけておきますが、興味があればカテゴリーの「CONTAX 645(機材編)」も併せて見てください。
CONTAX645; フィルム一眼レフ時代の最終段階で設計製造された中判カメラボディは完成度が高い。AFはいわゆる親指AFを常用。シャッター幕などへの負荷を考えて連続撮影はしなかった。2種類のフィルムバック(通常タイプとフィルムの平坦性を強化したタイプ)はたいへんユニーク。ネガ・ポジの画像は今見ても一級品。階調の豊かさはさすがに中判カメラ。デジタルバックを使うとカメラボディ本体と2系統のバッテリーが必要で、ランニングコストは決して安くはない。京セラがカメラ事業を撤退したためか、その後の雑誌などでのフィルムカメラの特集でもCONTAX645 はほとんど出てこない。
デジタルバック PhaseOne P30+(3000万画素); シンプルな内部構成で耐久性にも安心感。デジタルバックはRAW現像のみ、対応はCapture Oneのみです。直近ではCapture One 21 PROを使用。画素数や階調には不満はないが、流石に古さを感じるオートホワイトバランス。Panasonic LUMIX S1と比べると画像の潤いに乏しいような印象。センサーの設計製造年代の違いでこれらはやむを得ないです。
ウェストレベル・ファインダー; ウェストレベル・ファインダーという撮影方法では、なんと言ってもハッセルブラッドの6x6判フィルム一眼レフが有名です。CONTAX 645でもこのウェストレベル・ファインダーが用意されています。レンズは、Distagon T* 55 mm F3.5、Planar T* 80 mm F2.0あたりがサイズ的、バランス的にも使いやすい。デジタルバックの代わりにフィルムバックをつけると、CONTAX645の最軽量システムとなる。素通しのウェストレベル・ファインダーは通常のプリズムファインダーとは違った意味でその見え方が素晴らしい。ただし、左右反転表示のファインダー像と水平バランスの慣れには習熟が必要です。細かいピント合わせには適さない。スチール写真専門でゆったりと流れる時間の中で風景・スナップ・ポートレートを撮るならば、Hasselblad 907X & CFV 100Cなんかに夢がありそう(ただし、その価格を見てすぐに現実に引き戻されてしまいますが)
Distagon T* 35 mm F3.5; 発売時の注目レンズです。今でこそ、超広角レンズや広角系ズームレンズの後群には異常分散レンズが利用されるのが当たり前になりましたが、初めて、それも時間的にかなり先立って異常分散レンズを使用して設計を施されたのが、京セラ・コンタックス35 mm用 Distagon T* 21mm F2.8です。設計者が、APO Distagon と命名しようと考えたのも有名な逸話です。徹底した色収差の除去により、卓越した写りを生み出したこのレンズは、超広角レンズの傑作と言われています。形状的には、Distagon T* 21mm F2.8をそのまま大きくしたような、CONTAX 645用 Distagon T* 35 mm F3.5ですので、当然期待が大きく膨らみました。
写りは、Distagon T*21mm F2.8のまんまというか、優るとも劣らないレンズと言えます。中版ポジフィルムの広大な空間の中に驚くような高密度さが印象的で、すばらしいレンズだと思います。35mmと比べて、同じ画角でも中版の方が超広角感が少ないためにマイルドというか、個人的には普通に使い易いと思っています。最初はよく使いましたが、超広角レンズの使用頻度がだんだん減ってしまいました。
Distagon T* 45 mm F2.8; 写りに関しては比較的印象が薄かったようです。最短距離は60cmですのであまり寄れませんが、背景のボケは気に入ってました。中望遠のSonnar T* 140 mm F2.8と同じサイズですが、ズッシリとした重量です。どちらかというと使用頻度が少なかったでした。私は広角系が苦手なようです。
Distagon T* 55 mm F3.5; 645用レンズの中で最後に発売されたレンズで、中古市場でも一番人気のレンズです。小型軽量・非常にシャープな写りで、やや暗いレンズですが、確かに使いやすいです。ウェストレベル・ファインダーとの組合せで最軽量システムとなります。
Planar T* 80 mm F2.0; このレンズは645用標準レンズとして初めてF2.0の明るさを達成したレンズとして発売時から注目を集めました。京セラ(ツアイス)は、T* Planar80/2は35mm用P55/1.2と同等レベルと認識しているらしい、という話もありました。当時中判カメラ用レンズとしてF2.0の明るさをもつのは、他にはハッセルブラッド6X6用Planar FE 110mm F2がありました。
京セラ(いわゆるヤシコン)CONTAX一眼レフは、この645が初めてでしたので、よく言われるようにZeissへの強烈な第一印象を素直に受けました。Zeiss lenseの発色、色の濃密さ、ボケの美しさなど、従来から言われている点を実感しました。近接撮影で、絞り開放付近での合焦位置から溶けていくようなボケに関しては感動的でした。ボケの美しいのはF2~F4位まで。F2 からF2.8へと絞ると、コントラストも解像度も一気に高くなります。その後も絞るほどに、中央部も周辺部もコントラストと解像度は徐々に上がっています。F2.4では、ボケ味はF2.0に近く、解像度やコントラストはF2.8に近くなります。
中古市場ではボディ本体との組合せ(本来の標準セット)で今でもプレミアム価格がついています。中判のF2.0という大口径レンズが大人気のようです。
Apo Macro Planar T* 120mm F4; これも発売時の注目レンズ。645用の8本のレンズのうち、Apoがついたレンズは2本のみでした。よく使ったお気に入りのマクロレンズですが、マニュアルレンズでピント合わせが難しいです。マクロ撮影でこの性能をフルに出すためには三脚が必須です。
Zonnar T* 140 mm F2.8; ポートレート用に使いやすい軽量の実用的な中望遠レンズです。良く写ると思いますが、645用レンズの中では地味な存在です。35mm用Planar 85/1.4や伝説的なPlanar 85/1.2のような強烈な個性が無いのが、人気の無い理由かもしれません。中判用の中望遠レンズで、35mm版用のような大口径レンズを作るのは、現実的では無いのでしょうね。
Zonnar T* 210 mm F4.0 発売当初から地味な扱いのレンズで、現在中古市場では見向きもされない超不人気レンズです。ピントの合う範囲が極めて薄く、一方でオートフォーカスは近距離~中距離ではほとんど迷走してしまうので、AFですが実質MFレンズです。しかし一眼レフのファインダーでマニュアルフォーカスによるピント合わせの美しさに感動します。薄いピント面から前後にボケていく感じがほんとうになんとも言えない。サンニッパのピント合わせもこんな感じ? もちろん写りも大好きなレンズです。
T* Mutar 1.4X; 1.4倍のテレコンで、Tele-Apotessar T* 350mm F4と同時に発売されました。望遠レンズ用に最適化されて設計されているために、マスターレンズの性能をほとんど落とさないようです。
私の場合、Zonnar T* 210 mm F4.0専用として購入しましたが、Mutar T* 1.4X をつけて約300mm、35mm判換算で約180mmとなります。カメラ本体(P30+付き)と三脚・雲台などを含めると約5kgになるので持ち運びが結構大変です。210mmには三脚座がついていないのでMutarを付けた状態ではややトップヘビーの感が強く、私の三脚・雲台との関係、つまり、三脚(ジッツォ)~雲台(エルグ erg)〜クイックシュー/L型ブラケット(マンフロット)〜カメラ本体間のそれぞれの固定の安定性に難があり、T* Mutar 1.4Xをつけると撮影中に微ブレが生じてきっちりとしたピント合わせがなかなか大変でした。対応策として、GITZO システマティック三脚4型+システマティック雲台QD GH5381SQD (本来は超望遠レンズ用、現在は廃盤)への変更も考えましたが、使用頻度と重量を考えて結局断念です。
645レンズのマウントアダプターです。私自身は一切使っていません。主なところでは、ライカSシリーズ用に、ライカから純正マウントアダプターが出ています。ライカから歴史的には競合関係にあるコンタックス用の純正アダプターが出るということに最初は驚きました。ハッセルブラッド用にはサードパーティ製も含めてありません。フリンガーからは 富士フイルムGFX Gマウント用電子マウントアダプター Fringer FR-C6TG2が出ています。GFXシリーズ発売当初は、このフリンガー製を利用された方もけっこういたようです。設計年代を考えると、現代の高画素カメラ(5000万画素~1億画素)で使用する場合、あまり期待しない方がいいかもしれません。その他、サードパーティ製マウントを介して、EOS-5DMKIIで使う方もいたようです。
最後に、CONTAX645システムを整理している時に、もうすっかり忘れていたものが出てきました。懐かしい! それは「Talberg」(タールベルク/タルベルグ)! 京セラ(ヤシコン)一眼レフではファインダー内でピントの山を掴みにくいことが多く、その問題解決のためにある方が、単焦点大口径レンズでピントを正確に出すことを目的として制作された特別なファインダースクリーンです。当時マニアの間では大変話題になりました。ウェブ上にも取説的な詳細情報がまだ残っているのに気がつき驚きました。私もお願いしてCONTAX645専用品を入手しましたが、645用は純正のファインダースクリーンの枠を分解してTalbergを装着する必要がありました。ところが突然の京セラカメラ事業からの撤退で、純正ファインダースクリーンはあっという間に在庫払拭で、Talbergを使う機会も失われてしまいました。
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