文化・芸術

2023年11月25日 (土)

北アルプス高瀬川最深部へ(6) 市立大町山岳博物館

 

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大町市市街地の東側にある山の中腹にあるので、北アルプスの展望が良いです。大町ダムも良く見えます。この市立博物館は1951年(昭和26年)オープンで、「山博(さんぱく)」の愛称で「岳(だけ)のまち・大町」の皆さんに親しまれているそうです。また、現在大町市は「山岳文化都市宣言」のまちだそうです。

訪れた時は、建物がちょうど改装工事中で外壁にネットが張り巡らされておりちょっと残念でした。展示の中でいちばん興味深かったのは1階の常設展示「山岳人列伝~山岳文化を育んだ大町周辺の人々~」でした。日本の近代登山黎明期である明治末から昭和初期にかけて、この大町で活躍された方々のお話でした。
中心人物は百瀬慎太郎という大町出身の登山家・事業家・歌人の方です。当時の日本山岳会に入会、日本初の山岳ガイド組織「大町登山案内人組合」を設立、立山-黒部渓谷-針ノ木峠の冬季横断、針ノ木小屋などの建設・運営などで知られ、現在大町市で行われる夏山安全祈願祭は「針ノ木岳慎太郎祭」と呼ばれているそうです。

 

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博物館正面玄関あるいは博物館3階展望室からは、蓮華岳の大きな山体を中心に、北葛岳、裏銀座方面が少々、餓鬼岳、爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳、白馬岳などを見ることが出来ます。針ノ木岳は手前の大きな蓮華岳に隠れて見えないようです。針ノ木岳は、日本三大雪渓の一つ、針ノ木大雪渓があるものの、現在ではそれほど有名ではないと思われますが、当時は針ノ木峠越えなどにたいへん人気があったようです。

撮影機材 Panasonic LUMIX S1 LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.

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2023年9月29日 (金)

東京都立大学〜「日本の植物分類学の父」牧野富太郎が遺したもの〜

 

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高知県出身で「日本の植物学の父」の呼び名で広く知られている牧野富太郎博士の人生をモデルとしたNHKの朝ドラ「らんまん」。1958年(昭和33年)に練馬区立牧野記念庭園(1926年に居を構えた自宅の跡地)、高知県立牧野植物園(高知市)、東京都立大学牧野標本館ができました。今回、東京都立大学牧野標本館別館(南大沢キャンパス)で期間限定で開催されていた「牧野富太郎が遺したもの」〜植物標本展示など〜 を見に行く機会がありました。

現在の「東京都立大学」は、旧・東京都立大学 (1949-2011、1991年目黒区から現在の南大沢に移転)、組織改変で首都大学東京へ(2005-)、大学名称の変更で再び東京都立大学(2020-)と変遷していますが、膨大な植物標本が牧野博士とあまり関係が無かった「東京都立大学」になぜあるのか? よく質問されるそうです。東京大学や国立科学博物館にあった方が自然なのですが、練馬区の自宅に残された膨大な標本はほとんどが未整理状態であったので、どこも引き取り手がなく、1953年に尾崎行雄(政治家、元東京市長)と共に「名誉都民」第1号になったことが、都立大学に引き取られる直接的な理由だったそうです。

 

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展示されている植物標本を見てびっくり! いわゆる「押し花」ですが、まさにアートです。スケッチを見ても、欧米でよく見るようなボタニカル・アート! 幼少の頃から絵心に優れ、美的感覚も人並み優れていたのでしょうね。果物や野菜の「押し花」標本もあり、びっくりしました。自宅に1点くらい飾っておきたいような感じ(笑)。

期間限定の展示ということもあり、予想外に賑わっていました。9月のキャンパスは、学部学生にとってはまだ夏休みだそうで、閑散としていました。緑豊かなキャンパス(一部に秋の気配も)を散策し、学食でランチを食べたりカフェでお茶を飲んだりしながら、ゆったりとした時間を過ごしました。遠い昔のキャンパス・ライフを少し思い出しながら・・・・。

 

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2023年9月25日 (月)

バッハ・コレギウム・ジャパン(2023.9)~初めてのシューベルト・ミサ曲

 

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「バッハ・コレギウム・ジャパン」は古楽器(ピリオド楽器)を用いたバロック音楽のヨハン・セバスチャン・バッハの演奏団体として発足しましたが、教会カンタータの全曲録音が完了したのちは、鈴木雅明氏(BCJ音楽監督)も鈴木優人氏(首席指揮者)もその演奏対象を広げるべく様々な作曲家の宗教曲や歌劇(および交響曲・協奏曲・器楽曲)を演奏しています。バッハと同時代のバロック時代ではヘンデル、古典派ではハイドン、モーツァルト、ベートベン、稀ですが近代現代のキリスト教を題材とした作品(メシアン、ブロッホ、メンデルスゾーン)、そして最近ではロマン派にも徐々に及んでいるようで、シューベルトやブラームスなどです。

今回はシューベルト・ミサ曲第5番の演奏でした。初めて聴く曲でしたが、とにかく元気なミサ曲といった印象でした(笑)。合唱団もいつもに増して素晴らしかったでしたが、ソリストではバスの大西宇宙さんの存在感が大きかったでした。

 

今回の演奏会のプログラムに掲載されていた貴重な解説などをもとに、備忘録として少し整理してみました。

ヨーロッパ文化では絵画や音楽はキリスト教に根ざしています。ミサはカトリック教会での中心的な礼拝ですが、ミサはイエス・キリストが最後の晩餐で、弟子にパンを自分の肉、ワインを自分の血と見立てて分け与えたことを再現し、そして処刑ののちに復活したキリストを祝う儀式として、毎週日曜日に行なわれてきました。その儀式で読まれるラテン語の典礼文が、いわゆるミサ曲の歌詞となっています。この典礼文は、ある程度の抑揚を持って読まれていました。仏教における般若心経も、お坊さんが読む際に不思議な抑揚があるのと同じです。このような抑揚を持って読まれていたミサの典礼文を単純なメロディにしたのがグレゴリオ聖歌です。歌による祈り(讃美)はキリスト教の大きな特徴です。ミサ曲は、グレゴリア聖歌(8世紀半ばのフランク王国)から始まり、バッハ・ヘンデル・スカルラッティの時代(18世紀前半)でピークを迎え、オーストリア皇帝ヨーゼフ2世の「宗教寛容令」(1781)によりカトリック教会の力が大きく削がれミサも簡略化され、モーツァルトもミサ曲を書かなくなりました。

 
(注)同じキリスト教でも宗教改革(16世紀)で生まれてきたプロテスタントでは、ミサでは「カンタータ」(様々な楽器による伴奏付きで、ドイツ語による声楽曲)が演奏され、バッハは多数のカンタータを作曲しています。

 

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 「ミサ曲」とはミサの典礼文に付けられた音楽ですが、聖日・祝日の種類によらず毎回用いられる5つの式文が「ミサ通常文」と呼ばれています。
1)キリエ(慈しみの讃歌)~初期キリスト教会の祈りの言葉に起源
2)グロリア(栄光の讃歌)~キリスト誕生における天使の歌
3)クレド(使徒の信条)~「ニカイア信条」(西暦325年)における信仰告白
4)サンクトゥス(感謝の讃歌)~新旧訳聖書の詩を複合
5)アニュス・デイ(神の子羊=キリスト)~キリストを象徴する呼びかけ

これらが全て揃ったのは11世紀ごろのようです。さらにこれら全てに曲付けした「完全ミサ曲」として今に残る有名な曲が、14世紀の「ノートルダム・ミサ曲」です。

 
ところで現代でも演奏される有名なミサ曲というと、バッハ「ロ短調ミサ曲」、モーツァルト「ミサ曲ハ短調」、ベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」「ミサ曲ハ長調」、シューベルトのミサ曲(全6曲)、ロッシーニ「小荘厳ミサ」、ブルックナー(全3曲)などがあります。これらは、実際のミサで演奏された記録が無く、どちらかというと現代で言う演奏会用(バッハの時代には演奏会という概念自体がありませんでしたので、音楽家として神に直接捧げる楽曲とも言われています)として作曲されたようです。

なお「レクイエム」はミサの一種で、レクイエム=死者のためのミサには葬儀や追悼のミサが含まれます。「レクイエム」(楽曲)の構成は通常の「ミサ曲」とは異なっています。モーツァルト、フォーレ、ヴェルディ、ケルビーニ、ベルリオーズなどにより、多くのレクイエムが作曲されています。

 

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2023年7月20日 (木)

上野星矢(フルーティスト)

 

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今回はすべてフルートアンサンブル、「コンチェルティーノ」がなんとも素晴らしい。圧巻はステージいっぱいに広がる140~150人のフルートアンサンブル。

 


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今回のライブがそのままCDになって欲しい素晴らしい演奏会。1968年5月のジャン・ピエール・ランパルとオーレル・ニコレの競演を思い出す。

 

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お目当ての管弦楽組曲第2番、ふだんはあまり聞かない木管フルートで歯切れの良い現代的な演奏。次回は鈴木優人さんとの協演を切望。

 

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フランクが好き。若い頃よりはマイルドに? でもかっこ良い。
 
 
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こんな”お祭り”は初めて。伝説的な小山裕幾さんを初めて拝見。

 

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2023年7月18日 (火)

バッハ・コレギウム・ジャパン(2023.7)~バッハの癒しの曲?

 

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個人的に、J.S.Bach の3大 "癒しの曲" というと、「G線上のアリア」(管弦楽組曲第3番)、「主よ、人の望みの喜びよ」(カンターター第147番)、「羊は安らかに草をはむ」(カンターター第208番)あたりでしょうか。

今日はその中のカンターター第147番「心と口と行いもて、生涯をかけて」の演奏がありました。「主よ、人の望みの喜びよ」はその中のコラール(讃美歌)ですが、たいへん有名で管弦楽用などにも編曲されて、これ単独で演奏されたりすることも多いです。この有名な曲名「主よ、人の望みの喜びよ」の由来について、演奏会のパンフレット(木村佐千子さんの解説)をもとに簡単にご紹介します。

このカンタータは2部構成ですが、第6曲(第一部の最後の曲)と第10曲(第二部の最後の曲)が同じ旋律(メロディー)ながら歌詞が異なっています。この2曲はもともとは単に「コラール」(讃美歌:トランペット、オーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ、通奏低音などと合唱)としかされていませんが、第10曲については後世において特別に「主よ、人の望みの喜びよ」と呼ばれています。

この曲名は、第10曲第一行のドイツ語歌詞 "Jesus bleibet meine Freude" (イエスは変わることなきわが喜び)から、"Jesu, joy of man's desiring" へと英訳され、これから「主よ、人の望みの喜びよ」という日本語へ訳されたそうです。ちなみに同じメロディーで歌われる第6曲第一行のドイツ語歌詞は(何という幸い、私にはイエスがいる)です。これらの歌詞は Martin Jahn のコラール詩(1661年)の第6節、第16節から、また音楽はJohann Schop の旋律(1642年)によるものだそうです。

 

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2023年5月13日 (土)

バッハ・コレギウム・ジャパン(2023.5)~「ヘンデル 復活」

 

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BCJの音楽監督 鈴木雅明さんから、キリスト教における極めて重要な主イエス・キリストの「受難」「復活」とバッハ・ヘンデルついての解説がパンフレットにありましたので、簡単にご紹介いたします。

バッハが属していたプロテスタント・ルター派では聖金曜日の午後に、キリストの受難を記念する長大な礼拝が行われ、その中で今日非常に有名な「マタイ受難曲」も演奏されました。それに続く復活祭はさらに3日間にわたり行われたので、ここでも大規模な復活の音楽が演奏されたと思われますが、なぜかバッハは大規模な作品を残していません。それを補うという意味で、この定期演奏会では20歳代の若き日のヘンデルの傑作オラトリオ「復活」が演奏されています。

ところで、イエス・キリストの墓で遺体に香油を塗るために女性たちが出かけたところ、墓が空になっていること(復活)に気がついたのは、誰か? 新約聖書の4つの福音書では、マグダラ(地名を表す)のマリアとされています。この有名かつ重要なマグダラのマリアですが、さまざまな憶測もありますが、一般的にはイエス・キリストに付き添ってさまざまな手助けを行なっていた人と推測されています。

  

 

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バッハとヘンデルは、昔 中学校時代の音楽の授業で、それぞれ「音楽の父」「音楽の母」と教わりました。「音楽の父」とは、あらゆる音楽家たちの先生を意味するようですが、音楽史のターニングポイントにちょうどいたという意味で、英語圏では「すべての近代音楽の父」とも呼ばれるように、現代に直接つながる音楽史の源流にいた稀有な音楽家という方が理解しやすいです。一方、「音楽の母」ですが、これは「音楽の父」に対して、対の言葉としての日本人が考えた呼び名のようで、諸外国では使われていません。二人とも同じ時期・同じ地域で生まれ、この二人がバロック音楽最後期の2大巨匠であることには間違いありません。厳格なイメージのバッハと自由で明るいイメージのヘンデルを、父と母に当てはめるのが好都合だったのかもしれません。


音楽評論家の加藤浩子さんの解説では、同じ時代、同じドイツでお互い”ご近所”で生まれたにもかかわらず、かなり対称的な人物・生涯・音楽だったようです。簡単に整理してみました。

 

ヨハン・セバスチャン・バッハ


ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル

生まれ 先祖代々の教会音楽家の家系 宮廷外科医の息子
人生 北ドイツでのローカルな生活 イタリア・ロンドンに渡り成功を収めたコスモポリタン
性格 謹厳実直 豪放磊落(らいらく)〜豪快なエピソードに事欠かない
結婚生活 2度結婚し20人の子供をもうける 生涯独身
音楽 教会音楽を集大成 イタリア・オペラを極め英語オラトリオ(宗教的内容のオペラ)で新しい道を
  主に教会の礼拝、諸侯の祝福のために作曲 聖職者・貴族の豪華な宮殿・邸宅で演奏会
  音楽的にはメロディはより緻密 開放的なメロディ
  「マタイ受難曲」〜厳粛な聖金曜日の礼拝、聖書朗読に讃美歌などの音楽を付加 「復活」〜聖書物語の衣を被ったイタリア・オペラ、コロラトゥーラのような装飾歌唱を駆使した華麗な音楽空間

 

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2023年4月10日 (月)

バッハ・コレギウム・ジャパン(2023.4.7 聖金曜日)~マタイ受難曲

 
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私にとっても恒例となってしまった、春の復活祭に聴くマタイ受難曲。

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(音楽の父とも呼ばれます)のマタイ受難曲 (Matthäus-Passion) は、新約聖書「マタイによる福音書」の26、27章のキリストの受難を題材にした音楽作品(プロテスタント・ルター派の宗教音楽)です。1727年、ドイツ・ライプツィヒの聖トーマス教会で初演されました。オルガンやチェンバロを含むオーケストラ、合唱隊や独唱(ソプラノ・アルト・テノール・バス)が、それぞれ2組配置され、演奏時間は約3時間です。ごく簡単に言ってしまうと、宗教改革に熱心だったドイツ プロテスタント・ルター派の復活祭の礼拝で、聖書朗読の代わりに演奏されたのが受難曲、だそうです。

最近の定期演奏会では、2020(コロナで8月に延期), 2022, 2023年は鈴木雅明さん(父)、2021年は鈴木優人さん(子)の指揮で演奏されていますが、鈴木雅明さんにとっては今回100回目!のマタイだそうです。一方、今年の受難節、鈴木優人さんはオランダ・バッハ協会の「マタイ受難曲」公演ツアーで、オランダ各地(コンサートホールや教会)で13回もの公演をされています。父子が日本とオランダで同時にそれぞれマタイを振るというのも凄いと思いますが、約3時間の大曲をお歳を召されたお父さんは3日連続、まだ若い息子さんは約2週間ほぼ毎日公演を行うというのも、本当に体力勝負だと思います。

東京での定期演奏会では今回「ソプラノ・イン・リピエーノ」に「東京少年少女合唱隊」(15名)が参加されました。いつもとはちょっと違った響きが楽しめました。

「マタイ」では第一部の第1曲(合唱 シオンの娘の対話)と第29曲(第一部終曲の合唱 罪の嘆きのコラール)で挿入されている賛美歌(コラール)を児童合唱隊が歌うことがあり、このパートのことをソプラノ・イン・リピエーノと言うそうです。18世紀前半のバッハの時代、女性が教会内で歌うことは禁じられており、すべての声部はボーイソプラノをはじめとする男性によって歌われていました。近現代の演奏で女声を使用する場合、ソプラノ・イン・リピエーノのみを敢えてボーイソプラノとして演奏効果を高める狙いだそうです。

 

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2023年3月 1日 (水)

バッハ・コレギウム・ジャパン(2023.2)~「千変万化のカンタータ集」

  

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「カンタータ」は、さまざまな楽器編成(弦楽器・木管楽器・オルガン・チェンバロ・トランペットなど)を伴奏として、独唱・重唱・合唱などからなる音楽作品とされています。18世紀前半のバッハの時代、特に声楽作品は教会の礼拝や国王・領主の祝い事のために作曲されており、後世のコンサートに見るような音楽そのものを楽しむものではなかったそうです。

 

BCJの鈴木雅明さんによると今回は「千変万化のカンタータ集」とでも言うべきで、滅多に演奏されない!楽器や声楽の編成が非常に変わっている!など、多彩さ(異彩さ?)が際立っているそうです。指揮は鈴木優人さんです。

1)弦楽器は通奏低音を除くとヴィオラ4台(4声部)のみで、ヴァイオリンがいっさいありません! 異色の楽器編成、ヴィオラ4台の演奏が強烈なイメージを打ち出すけれども全体として一般受けするような音楽ではない、歌詞に現代にも通じる歴史的問題を含んでいる、の3点から演奏される機会が非常に少ない。(BWV18番)

2)アルト(カウンターテナー)独唱のためのソロ・カンタータ! それに加えて第1曲、第3曲は華麗なオルガン協奏曲の様相。演奏会では鈴木雅明さんがBCJの2019年マルク・ガルニエ製の大型通奏低音用オルガンで演奏されましたが、非常に印象的でした。(BWV35番)

3)曲の大部分が、ソプラノ独唱で歌われるソロ・カンタータ(BWV35番)

4)最初と最後の楽曲が合唱など主体で演奏される一般的なカンタータの構成ですが、この世で最も美しいとも称されるソプラノのアリア(ー死よ、来たれ。我が魂は主の御手のうちにあるー 歌詞がキリスト教的に最も美しいと言う意味か?)、最後の審判で響き渡るとされるラッパの音を思わせるトランペット(BWV127番)

 

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2022年10月31日 (月)

バッハコレギウムジャパン (2022.10) 〜 モーツァルト レクイレム

 

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バッハコレギウムジャパン(BCJ) の定期演奏会、今回は鈴木優人氏指揮によるモーツァルトのレクイレムです。BCJのヨーロッパツアーもスタートする中で、所沢・静岡・初台と続く連日の演奏会の最終日、皆さんちょっとお疲れかなと心配しながら聞きに行きました。

鈴木優人氏指揮による定期演奏会でのレクイレムは、初回 (2018.9) はBCJの首席指揮者就任・記念演奏会、今回 (2022.10) 2回目です。演奏はいずれも優人氏自身による補筆校訂版(2013)で、チケットは今回も完売でした。優人氏の御挨拶もたいへん力がこもっており、今後の企画として出るのではないかと思わせるような逸話もありました。

 

レクイエム、特にモーツァルト絶筆の曲とされるラクリモーサ(涙の日)は、映画アマデウス(1984年)でモーツァルト死の場面で流れ、たいへん印象深いシーンとなっています。ちなみにBCJのパンフレットの歌詞対訳では以下のような歌詞になっています。
「罪ある人が裁かるるため、灰よりよみがえるその日こそ、涙の日なり。されば神よ、彼を惜しみたまえ。主よ、慈悲深きイエスよ、永遠の安息を彼らに与えたまえ。」

 

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この2回のレクイレムのパンフレットでは、モーツァルトの葬儀や死の前後の状況が解説されています。内容が異なるために、読者としてはちょっと判断に困るのですが、映画アマデウスでは人からは見捨てられたように悲惨な状態で死んでいったように描写されていますが、以下のようにまとめてみました。

晩年のモーツァルトの音楽家としての評価・人気は、オペラ(フィガロの結婚、ドン・ジョバンニ、魔笛など)を除くと、凋落する一方で、ベートーベンの大胆さ・創意溢れる新作が非常に人気をはくしたそうです。以降数十年にわたり、殊更独創性と斬新さ、時によっては奇抜さが求められ、一世代前のモーツァルトの音楽が評価される機会は限られていたようです。

一方で、当時、ハプスブルク帝国皇帝ヨーゼフ2世(マリア・テレジアの長男、マリー・アントワネットの兄)は、葬儀簡素令を発布して埋葬の簡素化を図り、共同墓地への埋葬を促しました。埋葬規定によると、遺体は衣服を着せることなく麻袋に入れられ、遺体を納めた棺桶は遺体を共同墓地の穴に落とした後は、再利用されたようです。モーツァルトの葬儀もこれに従ったものだったそうです。葬儀費用は最も誠実な支援者だった男爵が負担し、モーツァルトの自宅からシュテファン大聖堂まで、葬儀の先導隊、棺、モーツァルトの親族、作曲家のウェーバー一家、モーツァルトの弟子や関係者、男爵、そして映画では悪人として描かれているウィーン宮廷楽長のサリエリも参列していたそうです。また、葬儀から日を空けずに宮廷音楽家たちにとって非常に重要な教会で、モーツァルトの仕事仲間によって死者追悼ミサが執り行われました。この場では、モーツァルトの自筆のレクイエム(現在のレクイエムのごく一部ですが)が演奏されたものと考えられています。ただ結果として、葬儀簡素令によりザンクト=マルクス墓地(ウィーン郊外)で共同埋葬されたために、遺体が特定できなくなってしまいました。

後世のベートーベンと比べると、ベートーベンの音楽的評価は生前にすでに確定しており葬儀も異例の盛大なものとなったけれども、モーツァルトにおいては音楽的な評価が生前には確定せず葬儀簡素令というタイミングの悪さもあり、悲惨な死というイメージが大きくなっているようです。

 

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2022年3月26日 (土)

バッハ・コレギウム・ジャパン (2022.03)

J.S. バッハは1685年3月21日の生まれで、今年337回目のお誕生日となります(笑)。かねがね、この誕生日に合わせて演奏会を行いたいと思っていたそうで、今回ようやくその願いが叶ったので、タイトルはまさに「バッハの誕生日を祝って」です。

前半は2台、3台のチェンバロ協奏曲(鈴木雅明さん、鈴木優人さん、そして客演の東京芸術大学教授・大塚直哉さんの豪華メンバー)。本来は4台のチェンバロ協奏曲も予定プログラムにあったそうですが・・・。後半は、プレリュードとフーガ(鈴木優人さんオルガン独奏)とカンターターです。祝祭にふさわしい華やかな曲ばかりでした。このプレリュードとフーガ、曲の最後の方で、多分ペダルだけで演奏しているのだと思いますが、重低音の素晴らしい響きに圧倒されました。大塚直哉さんもソリストとしてまた通奏低音として出ずっぱりでした。以前、NHK FM 古楽の楽しみで、大塚直哉さんと鈴木優人さんの対談がありましたが、なかなか興味深いお話でした。

最後は人々の平和を祈って、有名なカンタータBWV147番から終曲のコラール(合唱)が、久しぶりのアンコールとして演奏されました。

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