ニコンミュージアム企画展「光学ガラスの軌跡」
新型コロナ感染症の影響もあり、随分と久しぶりに品川のニコンミュージアムに行ってみました。各種の光学ガラス・合成石英ガラス・人工蛍石の実物の展示があったりして、普段あまり見られないような物もあり、なかなか興味深かったでした。その中でも、目を引いたのが「アッべ図から見る光学ガラスの進化」でした。
実はもう40年ほど前にニコンの方が、同じような図で光学ガラスの研究開発の結果を説明されていました。
「最近の光学ガラスの動向とレンズ」 日本光学工業 苅谷道朗・飯塚 豊, 写真工業 ,1982, 7月号, 特別記事, pp.22-30
内容は以下のようなもので、数式、光学ガラスnd(屈折率)ー vd(アッベ数)分布図、vd(アッベ数)ー 部分分散比図、光学設計とレンズ構成など、かなり専門的な解説がなされていました。
1 はじめに
2 最近の光学ガラスの開発 ・低屈折率低分散ガラス ・中屈折率低分散ガラス ・高屈折率低分散ガラス ・高分散ガラス
3 種々のレンズ ・望遠レンズ(異常部分分散ガラス) ・高倍率ズームレンズ ・大口径比標準レンズ ・ショートズーム リアコンバーター
この1982年というと、Nikonでは F3/F3HP/F3Tなどが、CANONではNew F-1が発売された頃です。
当時憧れの的であった高価な超高性能望遠レンズ~CANON new FD 300/2.8L, 400/2.8L, 500/4.5など、Ai Nikkor ED (IF) 200/2.0, 300/2.8, 400/3.5など~ その使用されている低屈折率低分散ガラスについて、光学ガラスnd(屈折率)ー vd(アッベ数)分布図を用いて説明されているのが非常に印象的でした。当時は、図の左下側にあるPC102という低屈折率・低分散・異常分散のフッ化物リン酸塩ガラスが各社の望遠レンズに実用化されており、フッ化物の含有量を増やしたより低屈折率低分散のFC21は、望遠レンズ用の大きな塊を製造するのがまだ困難という説明がなされていました。この憧れのNikkor EDレンズ、私自身はAi ED 180mm F2.8S(1981年10月発売)でようやく手にすることができました。
この新旧の「アッべ図」を比較すると、新しい図では光学ガラスの進化として蛍石・低屈折率低分散(ED)ガラス・合成石英ガラス・高屈折率ガラス・特殊高分散(SR)ガラスが挙げられています。EDガラスの右側は従来からの通常タイプ、蛍石に近い左側はスーパーEDガラスでしょうか? 蛍石との違いも分かり易いです。高屈折率ガラスもLADF42以外に非常に増えています、特殊高分散ガラスもDF32に加えてバラエティに富んでいますね。
これらはニコンの立場からの解説ですが、キヤノンの解説もあると面白いですね。
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