バッハ・コレギウム・ジャパン(2023.5)~「ヘンデル 復活」
BCJの音楽監督 鈴木雅明さんから、キリスト教における極めて重要な主イエス・キリストの「受難」「復活」とバッハ・ヘンデルついての解説がパンフレットにありましたので、簡単にご紹介いたします。
バッハが属していたプロテスタント・ルター派では聖金曜日の午後に、キリストの受難を記念する長大な礼拝が行われ、その中で今日非常に有名な「マタイ受難曲」も演奏されました。それに続く復活祭はさらに3日間にわたり行われたので、ここでも大規模な復活の音楽が演奏されたと思われますが、なぜかバッハは大規模な作品を残していません。それを補うという意味で、この定期演奏会では20歳代の若き日のヘンデルの傑作オラトリオ「復活」が演奏されています。
ところで、イエス・キリストの墓で遺体に香油を塗るために女性たちが出かけたところ、墓が空になっていること(復活)に気がついたのは、誰か? 新約聖書の4つの福音書では、マグダラ(地名を表す)のマリアとされています。この有名かつ重要なマグダラのマリアですが、さまざまな憶測もありますが、一般的にはイエス・キリストに付き添ってさまざまな手助けを行なっていた人と推測されています。
バッハとヘンデルは、昔 中学校時代の音楽の授業で、それぞれ「音楽の父」「音楽の母」と教わりました。「音楽の父」とは、あらゆる音楽家たちの先生を意味するようですが、音楽史のターニングポイントにちょうどいたという意味で、英語圏では「すべての近代音楽の父」とも呼ばれるように、現代に直接つながる音楽史の源流にいた稀有な音楽家という方が理解しやすいです。一方、「音楽の母」ですが、これは「音楽の父」に対して、対の言葉としての日本人が考えた呼び名のようで、諸外国では使われていません。二人とも同じ時期・同じ地域で生まれ、この二人がバロック音楽最後期の2大巨匠であることには間違いありません。厳格なイメージのバッハと自由で明るいイメージのヘンデルを、父と母に当てはめるのが好都合だったのかもしれません。
音楽評論家の加藤浩子さんの解説では、同じ時代、同じドイツでお互い”ご近所”で生まれたにもかかわらず、かなり対称的な人物・生涯・音楽だったようです。簡単に整理してみました。
ヨハン・セバスチャン・バッハ |
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル |
|
生まれ | 先祖代々の教会音楽家の家系 | 宮廷外科医の息子 |
人生 | 北ドイツでのローカルな生活 | イタリア・ロンドンに渡り成功を収めたコスモポリタン |
性格 | 謹厳実直 | 豪放磊落(らいらく)〜豪快なエピソードに事欠かない |
結婚生活 | 2度結婚し20人の子供をもうける | 生涯独身 |
音楽 | 教会音楽を集大成 | イタリア・オペラを極め英語オラトリオ(宗教的内容のオペラ)で新しい道を |
主に教会の礼拝、諸侯の祝福のために作曲 | 聖職者・貴族の豪華な宮殿・邸宅で演奏会 | |
音楽的にはメロディはより緻密 | 開放的なメロディ | |
「マタイ受難曲」〜厳粛な聖金曜日の礼拝、聖書朗読に讃美歌などの音楽を付加 | 「復活」〜聖書物語の衣を被ったイタリア・オペラ、コロラトゥーラのような装飾歌唱を駆使した華麗な音楽空間 |
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- <movie> 浜離宮朝日ホール / Hamarikyu ASAHI HALL (Tokyo)(2024.10.19)
- 石山寺 1992年GW 回顧録 ~ 大河ドラマ「光る君へ」 (26)いけにえの姫(2024.07.07)
- バッハ・コレギウム・ジャパン(2024.03 聖金曜日)~マタイ受難曲(2024.04.04)
- ブリティッシュパブ HUB(東京オペラシティ)(2024.01.29)
- バッハ・コレギウム・ジャパン(2023.11)~クリスマスと新年のカンタータ(2023.12.01)
コメント